大正11年、鮮魚と仕出しの伊藤商店として産声をあげた一福。
三代目・伊藤隆も跡をそのまま継ぐはずでした。
高校卒業後、板前の修業にも出ましたが
なぜか肌に合ったのはそば打ち。
初代・伊藤ソメが本業の傍ら、出雲そばの店「一福」を開店したのが昭和33年。
その店を手伝いながらそばの打ち方を習い、店を切り盛りするまでに・・・。

 

一本の麺棒を使い、丸くのす「丸打ち」という方法。
初代ソメから二代目國生、三代目隆、そして四代目弘典へと受け継がれてきました。
それは挽きたて、打ちたて、ゆでたての三たてを基本とし、一福本店をはじめとする各店舗で今も継承されているそば打ちの伝統です。

 

挽きたて、打ちたて、ゆでたての三たてのそばをお出しする・・・。
小さな店舗はまたたく間に多くのお客様で賑わうようになりました。
一方で、縁あって参加した他県でのイベントや百貨店の物産展で行ったそばの実演販売が大成功。
遠く離れた地の皆様にご好評いただきました。
以来、催事があると聞けば駆けつけ、全国津々浦々でそば打ちを実演する日々が始まったのです。
当時はまだそば打ちの実演販売が珍しく、折からのそばブームにも乗り、関心が高まってきました。
この時行く先々で自分の目でお客様の反応を見、肌で感じたことが、のちの一福の礎になっています。

 

「本場の奥出雲のそばの味を知っていただいたお客様にご家庭でも同じ味を!」と、
全国で実演販売を行うたびに通信販売のご案内も欠かさずお送りしていました。
一福の味を求めてくださる方々に、始まりの地・頓原から本場の味をお届けしたいと、実演販売から通信販売と店舗展開に重心を移していきました。

 

一度知っていただいた奥出雲のそばの味をご家庭や店舗で気軽に何度も味わっていただきたい、もっとそばそのものに集中したい、という思いから昭和47年、国道沿いに本店を移転開店し、地元を拠点にした販売体制の充実に努めました。
人を育て、味を守り、また田舎らしい素朴さを守ることで、各店舗で本店と同じ味をお楽しみいただけるのも一福の自慢です。

 

出雲そばはそばの実を殻ごと挽き込んだ野趣あふれる朴訥な味わいが特徴です。
コシが強く豊かな風味のそばによく合うこっくり濃いめのそばだしが、一福そばの味の要です。
このそばだしは初代・伊藤ソメが地元の人々に好まれる味を求めて創り上げた独創製法。
信頼のおける生産者の手で栽培されたそばとミネラル豊富な頓原の清らかな水を使い、選び抜いた昆布、煮干、しょうゆを最高の味になるまでじっくり煮詰め、造り上げています。
一福店主は代々何よりもこの味を大切に育み、今日まで継承してまいりました。
店舗でもご家庭でも、本場の出雲そばを味わっていただけるよう、吟味した材料と人の手、しっかりとした体制で安心安全な、より一層美味しいそばの味を、ここ頓原の地で追求し続けています。

一福そば打ち